プレス情報
2019年7月4日 コンクリート新聞
指針作成へ課題抽出
JCI圧送技術調査委が報告
相違点見出す
日本コンクリート工学会(JCI)は6月26日、東京・大井町のきゅりあんでコンクリート圧送技術調査委員会の報告会を開いた。同報告会では「安全性検討ワーキンググループ(WG1)」、「圧送計画検討(WG2)」、「建築土木指針の共通化(WG3)」の成果を報告した。
報告会で中田義久委員長(日本大学教授)があいさつし、JCIでは2005年にポンプの施工調査委員会を設置し、2009年に『コンクリート圧送工法ガイドラインおよび同解説2009』を発刊したとしたうえで、同委員会を設立した経緯について「ガイドラインはできたものの、土木、日本建築両学会にポンプに関する指針とは、圧送負荷の算定方法が異なる。そこで同委員会ではガイドラインの後継となる圧送工法指針を作成するため、情報収集を進めた」と述べた。
WG1の活動報告では、全国コンクリート圧送事業団体連合会の北口延郎専務理事が、圧送に関わる法令、規格、基準類について説明。施工管理者と圧送業者との間で安全性に対する認識の違いなどについて統計を用いて解説した。日本大学の宮田敦典助手は作業者の転落やポンプ車の店頭など事故発生要因ごとの分析結果を紹介した。ものつくり大学の大塚秀三教授は輸送管の肉厚化と破損の実態、安全性の向上に向けて検討した調査結果を公表した。これらを踏まえ、WG1では作業環境、圧送機器、圧送開始前、圧送作業中、作業終了後に元請担当者と圧送技術者がそれぞれ事前に確認するべき項目をまとめた圧送作業の安全性向上に向けたチェックリストの導入を提案した。
WG3では、両学会のコンクリート圧送指針などの相違点に関する調査結果を徳島大学の橋本親典教授が発表した。橋本教授は土木のスランプが8cmから12cmに変わった点や、土木工事でブーム式ポンプ車を使用するケースが増えている点をあげ、「土木と建築のコンクリートの圧送条件は近づいている」と指摘。それらを統合するため、JCIのガイドライン、両学会の指針の3つの相違点について説明した。
WG2は圧送計画の重要性について清水建設の浦野真次氏が解説した。圧送性評価の変遷について日本建築学会と土木学会の圧送負荷算定式の違いからどのようにすべきか提案した。圧送計画における課題では山婚の吉田兼治氏が実務者目線で課題と対策案を指摘した。特殊コンクリートの圧送については大林組の神代泰道氏が管内圧力損失を中心に解説した。これらの報告を経て浦野氏が圧送負荷算定における管内圧力損失(K値)の推定方法の試案として、普通骨材を使用した生コンで標準管と呼ばれる100A、125Aの両管を用いた時のスランプ8、12、15、18、21cmのK値の推定方法を提案した。
WGの活動報告の後、報告者らと近未来コンクリート研究会の十河茂幸代表、コンクリート用化学混和剤協会の玉石竜介氏によるパネルディスカッションを開催した。コーディネーターは中田委員長が務めた。