2023年3月 JCM REPORT コテ仕上げで緻密なコンクリートを | プレス情報 | 近未来コンクリート研究会は、インフラを適切に維持管理することを推進する支援をするとともに、これから建設されるコンクリート構造物を長寿命化するための研究を行います。

プレス情報

2023年3月 JCM REPORT

新コンクリートのはなし
第7回 コテ仕上げで緻密なコンクリートを

2023年3月 JCM REPORT コテ仕上げで緻密なコンクリートを | 近未来コンクリート研究会
近未来コンクリート研究会 代表 十河茂幸


 コンクリートの上面は、コテ(鏝)で仕上げるのが一般的です。コンクリートは平たんに仕上げることが要求されますが、コンクリートが柔らかい段階では、歩くこともできません。次第に凝結から硬化することになりますが、どの段階でコテを使って仕上げるかは、コンクリートの材料と配合、温度などにより凝結速度に違いがあり、仕上げのタイミングは異なります。今回は、コンクリート上面の仕上げ方法について概説します。
■上面仕上げの要領
 コンクリートの上面仕上げの要求性能は、示されていない場合が多いようです。基本的には仕上げをしない面と同等以上の品質であることが求められます。そのため、平たん性、緻密さ、強度などが要求性能と考えられます。コンクリートの上面は、ブリーディングが生じて、レイタンス層ができることから脆弱になりやすいため、適切な時機に
タンピング(再振動)を行って強化します。コテ仕上げでは、凝結の始発前に再振動を行うことで強度増加が図れるとされています。
 どのタイミングでコテを用いた仕上げをするかは、コンクリートの凝結の速さによります。コンクリートが移動しやすい柔らかさの段階で平たん性を確保し、凝結が始まる前の再振動可能な時期に押さえるとコンクリートは沈みひび割れを消し去ることができ、上面のコンクリートは強度の向上が図れます。
 目的は、平たんに均すための「コテ均し」と、表面を強化するための「コテ押え」の作業目的に分ける方がわかりやすいと思います。最終的な上面仕上げを「コテ仕上げ」と呼ぶ方が適切です。
■木ゴテと金ゴテの使い分け
 コテに使い方には、大きく二つあります。コテで平たん性を確保するために「均す」行為と、コテを用いて再振動を与えてコンクリート表面を強化する「押え」という行為です。均すにはトンボと呼ばれる器具を使うことがありますが、大きな面で均す方がやりやすいので、コテを使う場合は、木ゴテを使います。コンクリート表面を強化するには力が必要となり、金ゴテを使う方がやりやすいことになります。
 多くのコテを使い分けることが不合理な場合は、一つのコテで目的に応じて使い分けることを考えるといいでしょう。
■ブリーディングが生じない場合の仕上げ
 コンクリート上面にブリーディングが生じると、上面コンクリートは乾きにくいため、ブリーディングが生じなくなるタイミングで凝結速度を判断できます。つまり、凝結が進行するとブリーディングが生じなくなるためです。ところが、単位セメント量の多い高強度コンクリートなどでは、ブリーディングが生じにくいため、表面が乾くことにより、凝結が判断できなくなります。表面が乾燥し、コンクリート内部が凝結していないプラスチックシュリンケージと呼ばれる不具合が生じるだけでなく、コテ押えのタイミングが計れないことになります。また、ブリーディング水が少ないことから、表面が乾燥し、その下部にブリーディング水がたまる現象が想定され、それが硬化後に空隙となる場合もあります。高強度コンクリートなどの仕上げでは、乾燥防止のために、霧程度の散水をすることも効果的と考えられます。
■緻密なコンクリートとするための上面仕上げ
 コンクリートは元来、耐久性の高い材料です。コンクリートの上面に不具合ができるとそこから劣化が進みます。脆弱層のできる可能性がある上面を強化することこそが重要です。コテ仕上げはそのための行為と考えなければなりません。コテの使い方を理解して仕上げを行いましょう。

【参考文献】
1)十河茂幸、竹田宣典:コンクリートの施工のコツがわかる本、コンクリート新聞社、2021年2月