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2023年6月6日 中国電力三隅発電所見学会(報告)

・日時:2023年6月6日(火),13:00~16:00
・場所:島根県浜田市三隅町岡見1810
・見学内容:発電施設
フライアッシュⅡ種およびHiビーズの製造工程
フライアッシュコンクリートの石炭貯蔵設備
・参加者:24名
・主催:中国電力株式会社
・共催:近未来コンクリート研究会,広島県生コンクリート工業組合

中国地方では,水力や太陽光発電などを含めると1日600万kWの発電が行われており,三隅発電所はそのうちの3分の一にあたる200万kWの発電を行っている。そのような三隅発電所における発電施設,石炭灰の有効活用方法(フライアッシュII種およびHiビーズの製造工程),フライアッシュコンクリートを使用した石炭貯蔵設備を見学させていただいた。
インドネシア産とオーストラリア産の石炭を混焼してボイラで水を水蒸気にし,その水蒸気によりタービンを回して発電機で発電を行っている。発電所には1号機(1998年運転開始)と2号機(2022年運転開始)があり,それぞれ1日100万kWの発電を行っている。100万kW/日の発電のために1日8千トンの石炭が使用され,その約10%にあたる900トンの石炭灰が発生する。そのため,1号機と2号機合わせると1年間で40万トンの石炭灰が発生する。石炭灰の有効活用方法として,5割:セメントの原料,3割:埋め立て,2割:Hiビーズやライトサンドに用いられている。
混焼による排気ガスは,排煙脱硝装置で窒素酸化物をアンモニアと触媒により無害な窒素と水に分解する。次いで,電気式集塵装置で石炭灰を集め,2回の品質検査に合格したものをエコパウダー(フライアッシュII種)として出荷している。さらに,排煙脱硫装置で硫黄酸化物を石灰石水溶液と反応させて石膏として回収し,建材の石膏ボードなどに有効活用している。ちなみに,工場内の煙突は200mあり,島根県で最も高い構造物である。
発電所2号機用の石炭貯蔵設備は,セメントの20%をフライアッシュに置換したコンクリートを使用した,直径約43m×高さ53mのPC構造の円筒構造体6基である。発電所1号機用より建設コストが低いというメリットもあったそうである。揚炭場からベルトコンベアで輸送された石炭は,石炭貯蔵設備の上部から投入され,使用時は下側から排出される仕組みとなっている。これは,石炭をそのまま保存すると自然発火するので,それを防ぐためだそうである。なお,発電所1号機用の石炭貯蔵設備は,屋根がついており,炭種によって小区画に分けられる構造となっている点で世界初の機構である。
石炭貯蔵設備の横には,鋼製のバイオマス貯蔵設備が16基あった。国産の木くずは発電所1号機で使用されている。国内の木くずの自給率は低いので,
発電所2号基用には輸入ペレットを使用している。バイオマスは湿気が多いと発火するため,保管時の湿気管理が重要であるとのこと。
Hiビーズ(4~40mm程度)は,ミキサーで石炭灰とセメントと水を混合してからパン型造粒機で造粒し,48時間以上養生後に砕いてふるい分けして製造される。ふるい分けで生じた細かい粉はファインビーズとして再び造粒時の材料として使用される。Hiビーズは多孔質なので,栄養塩や硫化物イオン等の吸着効果があり,中海などの海底に散布されて水質改善に使用されているそうである。


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