2023年1月 JCM REPORT コンクリートの締固めの適切な方法 | プレス情報 | 近未来コンクリート研究会は、インフラを適切に維持管理することを推進する支援をするとともに、これから建設されるコンクリート構造物を長寿命化するための研究を行います。

プレス情報

2023年1月 JCM REPORT

新コンクリートのはなし
第6回 コンクリートの締固めの適切な方法

2023年1月 JCM REPORT コンクリートの締固めの適切な方法 | 近未来コンクリート研究会
近未来コンクリート研究会 代表 十河茂幸


 コンクリートの多くは構造材料として利用されます。その場合は強度が要求されますが、製造時や運搬時に気泡が入り込むと強度が低くなります。締固めは、余分な気泡の除去の役目と考えられます。締固めを怠ると強度低下の原因となります。締固めをすることで、均質で緻密なコンクリートを造ることになります。
 今回は、コンクリートの締固めの要領について概説します。
■締固めの方法について
 かつては、突き棒や締固め棒が使われましたが、多量の施工をするには機械式が望ましいと言えます。振動締固め機(バイブレーダ)を使用すると効率的に締固めができることから、バイブレーダが主流になりましたが、電気式で楽であるがゆえに乱暴な使い方をすることができます。コンクリートを横流しするのに使うと、コンクリートが分離して均質にならないなどの不具合も生じます。高周波にするほど、効率的であるから、周波数も高いものとなり、便利な振動機でありますが、誤った使い方をしないようにしましょう。バイブレーダの使い方を図に示します。
 振動の伝わる範囲を考えて、50cm間隔で振動機を操作させ、適切な振動時間を与えた後は、振動機をゆっくりと引き抜くことが必要です。また、打ち重ねてコンクリートを施工する場合は、前層に10cm程度差し込んで締め固めると、一体の構造物とすることができます。
■バイブレーダの種類と性能
 バイブレーダも様々なものが開発されています。通常はフレキシブルバイブレーダを用いますが、かぶり部分の振動締固めを行える細径バイブレーダや、届きにくい箇所には長尺なバイブレーダを使用します。ただし、振動部分の長さは、せいぜい40~50cm程度であり、その部分で振動を与えて締固めることを理解して使用しなければなりません。これらのバイブレーダは内部振動機と呼ばれますが、このほかに外部振動機と呼ばれる型枠バイブレーダもあります。型枠から振動を与えるので、型枠近傍の気泡の除去に役立ちますが、使い方を誤ると、むしろ型枠面のできる気泡が多くなる可能性もあります。
 振動数(周波数)は通常200~240Hzのものが多く、長い電源コードが付いています。充電式で電源コードをなくした機種もありますが、周波数は小さくなります。また、振動部分の直径は、通常直径は40~50mm程度ですが、ダム用振動機では75mmのものが多く、重量も大きく、固練りのコンクリートの締固めを行うため、バックホーに装着したバイブレーダが使用されます。
■締固め不足より過振動の方がまし
 振動時間は、コンクリート標準示方書では5~15秒程度が適切とされています。これは、通常のスランプでは、軟練りの場合に5秒程度、固練りの場合に15秒程度と理解できますが、現場でコンクリートのスランプを判断して締固めをすることは困難です。したがって、コンクリートの状態を見ながら締固めをする方が適切と言えます。振動不足の場合は、緻密にできないことになり、場合によっては空洞ができることになります。過振動では、材料分離が生じます。どちらが良いかは、一目瞭然、過振動の方が望ましいと言えます。コンクリートの柔らかさは時間とともに変化しますので、秒数で判断するより、コンクリートの状態を見て過振動になりそうな段階(気泡が出なくなり、ペーストが浮いた状態)で振動を停止するのがよいと思います。
■過振動で必要な気泡が減るか?
 コンクリートには必要な気泡と不要な気泡が混在しています。エントレインドエア(連行気泡)は、微細な気泡により耐凍害性の高いコンクリートとするためで、混和剤で気泡を連行します。それに対して、エントラップトエア(巻き込み気泡)は、練り混ぜ中や、運搬中に巻き込まれる大きな気泡で、耐久性を阻害します。振動締固めで除去されるのは、大きな気泡です。振動を掛け過ぎると微細気泡まで除去されるとの報告もありますが、微細気泡が振動させても出にくい性質がありますので、過振動の方が望ましいと言えます。

【参考文献】
1)日経コンストラクション編:現場で役立つコンクリート名人養成講座改訂版、2008年10月
2)土木学会編:2017年制定コンクリート標準示方書[施工編]、2018年3月